その時ボク等は目が合った
- 2015/04/19
- 02:52
---間もなく列車が到着します。
白線の内側でお待ち下さい---
構内にアナウンスが響き渡る。
金曜日。時刻は23時過ぎ。
明日が休みな人も多いのだろう。
プラットホームには意外と人が多い。
その中にほろ酔い気分で
電車を待つ男が居た。
名をヤスンと言う。
列車を先頭で待ち、彼は思いにふける。
(ふぅ…やっと任期が終わったな…)
ヤスンの会社では、
組合の任期が2年と設定されている。
そして今日は打ち上げ会だったのだ。
(さぁ。帰ってドラクエ10をしようか。)
列車がホームに入って来た。
減速する列車の窓から車内の
状況が良く判る。
人は割と乗って居るが
それでも充分座席は空いていた。
プシュー!と音を鳴らし
列車のドアが開く。
人が降りて来ないのでヤスンは乗車した。
(何処に座ろうかな。)
ヤスンは進行方向とは逆方向の、
通路側座席に着席した。
普段なら進行方向側に座るのだが、
酔っていたからだろうか。
(逆に座っちゃったな。)
(いつもと違う事すると)
(何か起きるよなぁ。)
彼は、ぼぉっと前方を眺めていが、
視界の中で気になる存在が居た。
通路を挟んで3席前だ。
黒髪で黒縁メガネを掛けた女性だった。
歳は22,3位だろうか。
ヤスンの好みなタイプだろう。
(なんだか気は合いそうだな。)
何故なら彼女は今、
左手にスマートフォン、右手で
ハナクソほじってる。
(ボク達まだ出会って2分だよ?)
(もう気を許してくれてるんだね。)
そして彼女はほじった指を眺め…
(あっ…そんな…なんて事を…)
食べた。
(フフッ今どきの若い子の流行りかな。)
ヤスンはそっと目を逸らした。
しかし彼は思った。
(さっきは見間違いだったのだろう。)
(酔っているせいだな。)
再び彼女に目をやると、
やはりさっきのは見間違いで
は無く、
ハナクソほじってた。
彼女の指遣いは艶めかしく官能的だ。
ヤスンは見惚れている。
その時だ。
彼等は目が合った。
(恋の予感がするよ!)
彼女はおもむろに指を抜き、
ハニカミながら
目線を斜め下におろし、
食べた。
恋が終わった。
おわり
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用法用量を守って正しくお食べ下さい。
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